有事の円買いなぜ起こるのか リスクオフとリスク資産の関係

世界情勢不安時の日本円の特殊な役割とその背景にある資本の動き

一 有事の円買い 円が避難通貨となる理由

国際政治の緊張 地政学的なリスク 金融システム不安などが高まると 投資家はリスクの高い資産を売却し 安全な資産に資金を移動させます この現象を**リスクオフ**と呼びます この際 日本円 JPY がしばしば買われる傾向があり これが 一般に 有事の円買い と呼ばれるものです

1 日本の世界最大の純債権国地位

円が避難通貨とされる最大の理由の一つは 日本が**世界最大の純債権国**であるという事実にあります 日本の金融機関や企業 個人投資家は 長年にわたり海外の株式 債券 不動産などの資産に多額の投資を行ってきました 世界経済が混乱し 不安が高まると 海外に投資されていたこれらの資金がリスクを回避するために**本国 日本**へと回帰します

この資金が日本に戻ってくる際には 外国通貨を売却し 日本円を買い戻す必要があるため 必然的に円に対する需要が高まり **円高**が進行します 経済の安定性よりも 資本の回帰という構造的な要因が 有事の円買い を引き起こす主要なメカニズムです

2 政治的安定性と極端な低金利

スイスフラン CHF も避難通貨として知られていますが 日本円もその地位を持っています 日本の政治体制は比較的安定しており 破綻のリスクが低いと見なされています また 長年にわたる**超低金利政策**のため 多くの投資家は円を借りて それを高金利の外国通貨に投資する **キャリー取引** を行っています

リスクオフ局面では キャリー取引が解消されます 投資家は借りていた円を市場で買い戻して返済する必要があるため これも円に対する突発的な需要を生み出し 円高を加速させる要因となります

二 リスク資産とリスクオフ時の相関関係

有事の円買いを理解するためには 避難通貨 Safe Haven Currency と リスク資産 Risk Asset の関係を把握することが重要です

1 主要なリスク資産となる通貨

リスク資産とされる通貨は 通常 世界経済の成長や商品 Commodity 価格の動向に強く連動しています

リスクオフ時には 投資家はこれらのリスク資産を売却し その決済資金を円や米ドルなどの避難通貨に移動させるため 円高ドル高と リスク資産通貨安 という明確な相関関係が見られます

三 投資家が市場変動時に取るべき戦略

リスクオフ時の市場の動きは急速であり 予測が難しいものです 投資家は構造的な円高圧力を理解し 戦略的に備える必要があります

1 ポートフォリオのヘッジ戦略

海外資産を多く保有している日本の投資家は 予期せぬリスクオフによる円高から資産価値の目減りを防ぐために **為替ヘッジ**を行うことを検討すべきです 円の買い戻し圧力がかかると 資産の円建て価値が低下するため 先物やオプションを利用してリスクを管理します

2 ニュースの即時反応と冷静な判断

突発的なニュース イベントが発生した際 市場は過剰に反応することがあります しかし 有事の円買い が構造的な資本回帰によるものであることを理解していれば 感情的なパニック売り買いを避けることができます **一時的な変動**と**長期的な構造的圧力**を区別して判断することが重要です 長期的なトレンドは 金利差と経済ファンダメンタルズによって決定されます

有事の円買いは 日本円が持つ世界的な地位と 日本のユニークな経済構造の産物です この現象を理解することは 外国為替市場の奥深さを知る上で不可欠な要素となります